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フィリピンの医療制度を考える

フィリピンの医療制度について考察する機会があったので
ここにAbstractとして記しておきたい。


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フィリピンの医療事情は昨今、改善傾向にある。その大きな理由としては国民皆保険制度 Philhealth を基軸として
民間の保険などが平行し医療の向上に寄与しているとかんがえられるからではないだろうか。
ただ、Philhealth は原則的に入院のみをカバーしてお り多くの外来診療に関しては自己負担となっている点なども
日本の国民皆保険制 度とは違うとこだろう。
フィリピンでは昨今、新しい高層ビルが立ち並び、アジア主要のビジネス街としての片鱗を見せている一方で
経済格差は広がりを見せ、貧困層に向けて医療保険制度の Philhealth では貧困プログラムとして年間の医療費が無料となる制度を行っ ているものの全てを掌握するには至っていない。

公衆衛生
各種指標、平均寿命や Material Mortality Rate、Infant Mortality Rate などは
いずれも毎年改善傾向にあるものの依然状況が悪いことには変わらず、改善の余地は残っているものと考えられる。
フィリピンでは昔からの死因である感染症関連死と生活環境や寿命の変化による新しい死因の
2つの間で医療の方向性を模索している。

個別疾患に対する比国内の問題
近年、フィリピンでは生活習慣に起因すると考えられうる Diabetes Mellitus 患者及び予備軍の増加が問題視され、DM統計の開始された 1980年以降 DM 罹患率は漸増を続けDM Risk Factor を持つ予備軍の人口割合は 30%超と今後さらなる生活習慣病に対する対応を迫られることは容易に想像できる。
また、新生児、小児の死亡率などは改善傾向にあるものの、5歳未満の死亡率の高さが依然解消されておらず、
2016 年 Philippine DHS の発表では Under-5 Mortality の 46%が産後1ヶ月未満、その 80%が1週間未満での乳児死亡かつ早産、呼吸器疾患が死亡原因の 54%と半数以上を占めている。
同様に Neonatal mortality rate per 1,000 live birth が 13.7 と 1%程度(日本における 周産期死亡率 1,000 出生当たり 3.3)あるということ、Congenital の死亡率が 19%、 周産期死亡の地域格差がないことからも感染などの点や出生時の外的 要因などは考えにくく、出生時に胎外生活に必要な呼吸循環動態の移行が順調に進行しない事例に対しての蘇生不全なのではないかと推測できる。
この 事例などは後述する医療施設、NICU の数や医師の数などと合わせて検討すべきではないだろうか。

医療保険制度

フィリピンの医療保険制度は 1995 年に Social Security System(SSS),Government Service Insurance System(GSIS)の医療保険部門が Philippine Health Insurance Corporation(PHIC) に統合され設立され現在まで国民の医療保険を包括的に管理している。
PHIC は先述の SSS,GSIS 同様、政府の管理機関で主な財源を労使の負担による社会保険料、投資による資産運用、公的資金を統括し運用している。PHIC の 2012 年度、医療支払総額は 472 億ペソと 2007 年の 114 億ペソから 4 倍もの増加を示していることからも医療保障の 必要性は国民にとって重要視されている一面があるということが分かる。
PHIC の運営する Philhealth(日本における国民皆保険制度の様なもの)は National Health Insurance Act of 1995,Republic Act No.7875 により原則、全国民の加入が義務付けられており、保険料徴収の対象者としては被雇用者、自営業者。
貧困指定を受けた貧困プログラム対象者の保険料は国と地方自治体の負担によって運営されている。
保険適用者は加入者、貧困プログラム対象者、退職者、保険料支払い満了者及びこれら対象者の扶養家族であり、加入者数は 8067 万人と全国民の 80%以上をカバーしている。
また現在では、海外労働者(Overseas Filipino Workers)も Philhealth の加入対象者となっている。
医療保険の給付は入院をした際の室料、診療料や新生児のケア、マラリア や AIDS などの予防医療などが主な対象ではあるが外来診療での検査料なども一部保険適応となっている。

医療機関・施設
医療提供施設は運営母体により公的機関、民間機関に分類され地域や医療人材、設備に応じて Primary Health, Secondary Health, Tertiary Health と区分されている。
公的病院は 730 施設あり公的・私立病院で賄えない部分をバラ ンガイ(最小行政区分)にある保健所 19,284 施設が医療行為を行っている。 公私合わせて人口 1 万人当たりの病床数は 2010 年現在で 12.3 床と日本の 132.5 とは比較にならないほど少ない数ではあることも特筆すべき点だ。
医療機関に従事する人数は医師 93,862 人、看護師 352,398 人と日本の医師 数の半分以下しかおらず、マニラなどの都市部での医療従事を希望する割合 が多く、地域偏在があるため農村部などでは無医村が散見される。また、医 師、看護師以外にもバランガイで医療に従事する Barangay Health Worker が 多く勤務していることもフィリピンの医療を語る上では外せない。

フィリピンの医学教育
フィリピンの医学教育はアメリカ同様に M.D 式で日本の MBBS とは違い理科系大学、看護大学などを卒業した後に Graduation School である医学部に進学する形式を取る。
大学の数は WHO に認定されている医学部は 40 大学あり 年間 2,500 人程度が医師として誕生しているが昨今、医療人材の国外流失もフィリピン国内の医療事情を悪化させる要因になっている。

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おわりに

フィリピンの医療においては様々なことが日本と違い Surprise をうける。例えば公的な医療機関を受診する際に医師から医療資材を近くの薬局で買ってくるように求められたり、薬局では薬にかぎらず注射器や点滴の針、輸液にはじまりメスやクーパーなど様々なものを買うことができる。
急激な経済発展を遂げている部分があるものの未開発な公衆衛生環境の低い地域で起きる感染症と生活習慣病や悪性腫瘍などの疾患の構造転換が見られることもフィリピン特有の医療問題であると考えられるだろう。
医療技術に関してアメリカの M.D.と同様の教育を行っている為、US. Standard が実践されてはいるものの医療受領者との医療知識の乖離が大きく、 代替医療への信仰や医療にかかることへの経済的な回避行動から Standard 医 療が実践できていない点も改善すべき点なのではないだろうか。死亡率に関 して、都市部とそれ以外の地域で 5〜10%ほど違いがあるというレポートも発表されている、地域差だけでなく Mother Education Ratio も Life Style と寿命 と密接しているという点も今後のフィリピンの医療や公衆衛生においては改善、検討の余地の残る部分だと考える。
最後に、発展途上にあるフィリピンではあるが一部の地域では ASEAN の中では比べ物にならないほど高水準、他の先進国とも引けをとらない部分が存在する一方、飢えをしのぎながら路上生活をする人々がまだまだ多く見かけられる。
医療と生活水準のボトムアップとを両立していかなければならな い課題があるため地方と中央、保険基盤を一層拡充し国民の生活、健康を保護する必要があるだろう。


出典・参考文献
*Calculated based on data from the UNICEF/ WHO/ The World Bank/ UN Pop Civ. Levels and Trends in Child Mortality Report 2014
*Philippine DHS 2013
*The 2013 update, Global Health Workforce Statistics.
*WHO 2014 Global Health Expenditure Database
*The National Health Insurance Program in Philippine :Critical Challenge and Future Directions Report by Maricel T. Fernandez, Alex B.Brillantes jr,Abigail Modino
*WHO Diabetes country profiles 2016
*Republic of The Philippines Office of The President Commission On Higher Education, Policies Standards and Guidelines for the Doctor of Medicine program 2016
*医療と社会 Vol.18 No.1 2008 河原和夫著 特集論文 フィリピン共和国の保険医療事情と医療保険システ ム
*厚生労働省『平成 25 年医療施設調査・病院報告』
*National Statistical Coordination Board(NSCB)
*2013 Philippine Statistical Yearbook
*Health Facilities and Government Health Manpower

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